2017/03/20

書評:ダニエル・ピンク「人を動かす新たな3原則」|誰もがセールスに関わる時代

 
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インターネットが発達し情報の溢れる今の時代、セールススキルは必要なのでしょうか?

ダニエル・ピンク著「人を動かす新たな3原則」は、そんな時代だからこそ、売らないセールスが必要だと説きます。

今回は、この本の中で触れられている、セールスの力がますます必要になってきた時代背景について紹介していきます。

3年後の未来を見通すダニエル・ピンク

まず簡単に著者と本書の紹介から。

著者のダニエル・ピンクは元アル・ゴア副大統領のスピーチライターでしたが、激務すぎて、ある時、植木鉢に吐いた(?!)ことから、転職してビジネス書ライターになった、アメリカのビジネス作家の中でも異色の経歴の持ち主です。

「フリーエージェント社会の到来」を出版して以降、「モチベーション3.0」「ハイコンセプト」と次々とベストセラーを連発し、瞬く間にアメリカの人気ビジネス書ライターとなりました。

本書の日本語訳を担当した神田昌典氏は、『ダニエル・ピンクの新刊は、3年度の、ビジネス界の常識をつくる!』と指摘しており、アメリカのみならず世界のインテリ層が彼の出す書籍を心待ちにしています。

そんな彼が、セールス、ひいては営業職について書いたのがこの「人を動かす新たな3原則」です。

売り手が選ばれる時代|レモン市場の消失

本書では、『これまでの買い手が選ばれてきた時代は終わり、これから売り手が選ばれる時代になった』と述べ、売らないセールス力を身に着ける重要性を説いています。その一例として挙げられているのがレモン市場の消失です。

経済の用語で、レモン市場という言葉があります。野村證券のHPには、レモン市場について以下のように書かれています。

品の売り手と買い手に情報格差が存在するため、安くて品質の悪い商品(レモン)ばかりが流通し、高くて品質の良い商品(ピーチ)が出回りにくくなる現象のこと。レモンは皮が厚くて外見から中身の見分けがつかないことから、主に米国で低品質の中古車の俗語として使われている。
売り手は、買い手が商品の本質を知らないため、自分の売りたい商品が不良品でも良質な商品として売ろうとするが、買い手はそれが低品質の商品だと分かると次第に評価をしなくなり、さらに買い取り価格を下げるため、ますます不良品が多く出回る市場になってしまう。
アメリカの理論経済学者ジョージ・アカロフが1970年に論文で情報の非対称の例として用いた。

(証券用語解説集「レモン市場」|野村證券)

例えば、中古車のディーラーがいて、お店に来たお客さんになんとしても中古車を売りたいと仮定しましょう。中古車は一見しただけではそれがどのくらいの性能を持ったものなのかわかりません。このことを悪用した一部のセールスマンが、本来市場でつけられる適正な価格より高値で中古車の売りつけ始めます。

そうすると、お客さん側も、セールスマンのいうことが信用できなくなるので、不良品でない中古車もお客さんに「本当はオンボロなんじゃないの?」と疑われてしまい、本来の市場価格より安い値段でしか買ってもらえなくなります。

その結果、「不良品でない中古車を売ろうとしても安く買い叩かれるのだから、最初からオンボロの車を売りつけるほうがマシ」という考えが広まり、ますますオンボロの車が世に出るようになります。

これが、「レモン市場」です。このレモン市場は、現在においても存在し続けていると一般的には思われてきました。

しかし、ダニエル・ピンクは現代ではレモン市場は無くなっているといいます。これまでレモン市場が生じていた根っこの原因は、売り手が中古車について買い手より詳しく、お客は売り手の持っている情報が購入に対するメインの情報源だったことが原因でした。

ですが、消費者は買い物、特に高い買い物をするときは事前に雑誌やインターネットできちんと下調べしてから購買行動に移ります。つまり、売り手の言葉だけが情報源ではなくなってきたのです、その結果、売り手はそれまでのお客に商品について説明して「あげて」販売するという立場から、見る目の肥えたお客に自分の製品を買って「もらう」立場へと変わっていきました。

『買い主は気をつけよ』から、『売り主は気をつけよ』の時代に変わってきたのです。

現代人はみんなセールスに関わっている

また、本書ではフラー・ブラシ社という野菜洗浄用のブラシをタダでプレゼントすることでお客とのきっかけを掴もうとする、飛び込みの訪問販売をする最後の営業マンに密着した話が出てきます。

フラー社は訪問販売で一時期、10億ドル規模にまで成長したことのある、ある程度の年齢を重ねたアメリカ人なら知らない人のいない大企業でした。しかし、競合他社の誕生、流通網の整備、インターネットの発展でフラー・ブラシ社は破産宣告を行いました。

では営業はこれからの時代なくなっていくのでしょうか。否、その逆です。

1. 現在、職場で過ごす時間の40%が、売らない売り込み――購入行為に誰一人関与せずに、他人を説得し、影響を与え、納得させること――にあてられている。後半な職業にわたって、一時間ごとに約二十四分が人を動かすことに費やされている。

2. たとえかなりの時間を費やす必要があるとしても、この側面は仕事で成功を収めるうえで必要不可欠だとみなされている。

(人を動かす新たな3原則)

お医者さんは患者さんを診断して、治療薬の効果を売り込みます。弁護士は裁判官に有利な判決を出してもらうように売り込みます。教師も生徒に、寝ないで授業に集中することで生まれる価値を売り込みます。起業家は投資家に、ライターはプロデューサーに、コーチは選手に、どんな職業の人を売り込みをしているのです。

このような活動はデータとして表れることがないので、一見そのような行為をいつの間にかしていることは思いません。しかし、現代人の活動の大部分は「人を動かす」ことに費やされているのです。

まとめ

ただ何も考えずに商品を提供していれば売れていく時代は終わりを告げました。インターネットが発達し、経済的に加工していく日本の中で、財布を握ったお客さんの目はますます厳しいものとなっています。

その一方で、現代は他人に自分を売り込んで、人に動いてもらう力が多くの場面で求められています。

時代を理解して、セールスに本質を学ぶうえでは、「人を動かす新たな3原則」は必読の一冊です。

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