2017/03/02

書評「人口知能と経済の未来」|AI×ベーシックインカム

 
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人工知能(AI)が人間に勝ったというニュースや、ロボットに仕事を奪われるというニュースをよく聞くようになりました。

でも実際の所、本当に機械に仕事が奪われるのでしょうか?

2016年はAI元年と言われ、多くのAIに関する書籍が出版されました。

今回はその中から、井上智洋著「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」についてご紹介します。

 

 

AIがもらたす経済への影響に興味がある方は、絶対に読むべき一冊です。

 

人工知能は「まだ」仕事を奪わない

近年の技術進歩の早さには目を見張るものがあります。

しかも、その速度は今後ますます高まっていくことでしょう。

私が英会話をマスターするよりも早く完全な自動翻訳機が現れ、私がハゲるよりも早く完全な育毛剤が登場するように思われます。

とりわけ、「人工知能」は、私たちの生活で、社会、経済に大きな影響を及ぼすでしょう。

そういう意味で、21世紀は間違いなく「人工知能」の世紀になると思います。

(井上 智洋|人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊)

 

昨年のクリスマスから年末までのホリデーシーズンで、アメリカのAmazon社で一番売れた製品は、同社の人工知能スピーカー「エコー(Echo)」だったと発表されました。(AFPBB News|米アマゾン、休暇シーズンのトップセラーは人工知能スピーカー

このようなニュースがよく私たちの耳に入ってくるほど、人口知能は身近なものになってきています。

そのような世の流れの中で、さかんに言われているのが「人口知能は仕事を奪うのか?」という問題です。

AIが小説を書いて星新一賞の一次審査を通過したというニュースを聞いたりすると「これからそ仕事は全部AIに奪われるんじゃないか…?」とおもわず不安になってしまいます。

本書では、人工知能が奪う仕事は「まだ」限定されていると論じています。

 

現在の人口知能は、「特化型」

今存在する人工知能はすべて「特化型人工知能」と言われています。

例えば、グーグルのAlphaGoは囲碁に関しては人間のトップ棋士をも上回る実力を持ちますが、囲碁以外のことはできません。

同じく、AIによる小説の執筆に関しても、単語や文章のつながり、物語の展開はすべて人間がプログラミングしているのが現状で、AIだけで作品を作ることはできないと言われています。(東洋経済ONLINE|AIが書いた小説はどれだけ面白いのか

限定された領域でしかAIがその能力を発揮できないのであれば、人間はAIが手を出せない別領域の仕事をしてしまえば良いわけです。

ですので、人工知能が「特化型」である限り、雇用への影響は限定的と言えます。

しかし、この状況は2030年頃からガラリと変わります。

 

2030年以降、仕事はなくなる?!

2030年頃には、「汎用人工知能」の開発の目途が立つといわれています。

この汎用人口知能こそが人間の仕事を奪っていくのです。

汎用人口知能とは、人間のように様々な知的作業をこなすことのできる人工知能のことです。

もし、AIが人間の知能を凌駕するほどに発達するのならば、企業は生身の人間よりもAIやそれを搭載したロボットを雇うことでしょう。

だとすると、新しいタイプのタスクが生まれたとしても、労働者は一切雇われなくなるかもしれません。

(井上 智洋|人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊)

 

あなたが、会社の経営者になったと想像してみてください。

あなたには人間の部下と、AIを搭載したロボットの部下がいます。

ロボットの部下は人間とほとんど変わらない仕事をすることができます。

人間の部下は、体調が悪くて休む時があったり、就業時間を過ぎると退社していきます。「残業させるな!」と会社に文句を言ってくるかもしれません。

一方、ロボットの部下は休んだりしません。24時間365日働くことができます。もちろん、文句も言ってきません。

 

ソフトバンクのロボットPepperのレンタル価格は現在一時間1500円です。(Pepperのサポート要員の給料などは考慮していません。)

最低賃金は都道府県によって異なっていますが東京都では時給900円ほどです。

その差はわずか600円しかありません。

(井上 智洋|人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊)

 

人間より、ロボットを雇う方が合理的になる未来はすぐそこまで来ています。

とはいえ、「機械に奪われない仕事だってあるでしょう?」とお思いの人もいるでしょう。

本書でも、機械に負けない仕事が紹介されています。

 

機械に負けにくい3つの領域。しかし…

下記の3つの領域の仕事は人間の方が有利だと本書で紹介されています。

 

  • クリエイティビティ系(創造性):小説を書く、映画を撮る、新商品の企画を考える etc.
  • マネージメント系(経済・管理):工場・店舗・プロジェクトの管理。会社の経営 etc.
  • ホスピタリティ系(もてなし):介護士、看護師、保育、インストラクター etc.

 

しかし、この領域に入る職業であれば安心、というわけではありません。

ありふれた文章しか書けない小説家や、もてなしの精神が足りないインストラクターは、機械の方がマシと思われたら職を失ってしまいます。

結局は、人口の一割ほどしか労働しない社会になっていくと本書では予想されているのです。

 

働かない社会は究極の格差社会

「働かなくていいなんて最高じゃん!」と思いませんでしたか?

確かに、働く必要がないなら、好きなことを沢山できそうです。

しかし、そこには落とし穴があります。お金の問題です。

2045年ごろには、実のある仕事をして、食べていけるだけの収入を取っている人が一割程度になると予想されています。

大多数の労働が機械に奪われる中で、クリエイティビティやホスピタリティが優れている人の仕事は増えていきます。

つまり、人口の1割しかいない、働いている人の下にお金が集まっていきます。

逆に、9割の働いていない人は、労働していませんから、もちろんお金を得ることができません。働きたくても、機械の方が優秀ですから働けません。

好きなことができる時間はあっても、お金がない。

ほどんどの人が働かない世界の行きつく先は、究極の格差社会なのです。

 

ベーシックインカムですべて解決?!

このような格差社会でどのようにして生きていけば良いのか?

その疑問への回答として本書が主張しているのが、ベーシックインカムです。

ベーシックインカムとは、収入の水準に関係なく、すべての人に最低限の生活費を無条件で一律に給付する制度のことです。BI(Basic Income の略)とも呼ばれています。

オランダでは2016年1月からユトレヒトなどの幾つかの都市でBIの試験的な導入が図られています。

スイスでは、2016年6月にBI導入の是非を問う国民投票が行われましたが、残念ながら否決されました。

フィンランドでは、政府がBIの大規模実験の準備に着手しており、アメリカでも実験の計画があります。

(井上 智洋|人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊)

 

ベーシックインカムの利点としてあげられているのは以下の2点です。

 

貧しい人を助けられる

ベーシックインカムは、理由を問わず全国民にお金を配るので、政府が認める理由(母子家庭、失業、老齢 etc.)以外の理由で貧しくなってしまった人に対応することができます。

 

「年金」の代わりになる

AIが発達して、9割の人間が働かなくなる社会では、ほとんどの人が最低限の生活をするためのお金を稼ぐことができません。

ベーシックインカムを導入すれば、みんな少なくとも生きていくことができます。

カーネギーメロン大学、ロボット工学研究所の教授であるハンス・モラヴェックは、以下のようにベーシックインカムの導入を支持しています。

「将来は、財源をもっと広げ、ロボット企業から法人税としてお金を集めて、人間に年金を支給すればよいのである。」

(井上 智洋|人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊)

 

 

ベーシックインカムの問題点

2030年以降のAIによる雇用崩壊に対して、ベーシックインカムの導入を本書は主張しています。

しかし、その主張の中で述べられている、「財源が問題ではない理由」については若干強引さを感じました。

以下は、財源に関する、私が感じた問題点です。

 

増税すればよいだけ?

財源の問題に対して本書では以下のように述べられています。

「財源は限られている」という言い方がありますが、財源は限られてなどおらず増税すれば良いだけの話です(赤字国債を財源にすることも不況時にはむしろ有益であり得ます)。

国民生活を向上させる政策であれば増税してでも実施すべきです。

(井上 智洋|「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」)

 

日本人の所得は250兆円ほどあるので、25%の率の所得税を新たに掛ければ64兆円を捻出することができます。

(井上 智洋|人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊)

 

「増税?!反対!」と思う人が大半なのではないでしょうか。

消費税を5%から8%に変えるのにさえ、多くの反発が巻き起こりました。

10%への増税予定時期も、2017年4月から2019年10月に延期されています。

非常にシビアな反応が起こる増税問題に対して、「国民生活を向上させるため」といっても、なかなか賛同してもらないでしょう。

加えて、所得税を増税するとなれば、サラリーマンの人は源泉徴収で毎月の手取りが目に見えて減りますから、反発が起きることは間違いありません。

 

高所得者の反発

BI導入に対する高所得者の反発は当然予想されますが、そこさえクリアできれば十分に実施可能な制度であることがわかってもらえたかと思います。

(井上 智洋|人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊)

高所得者に対して経済的なメリットを感じられないことも大きな問題です。

人口の1割しかいない、働く人にとっては、ベーシックインカムが不当に自分のお金を奪っているように見えてしまうことは否定できません。

「お金をとられてしまうなら」と高所得者が海外に移住してしまうことは十分に考えられます。

 

まとめ

ベーシックインカムに対する疑問点について記しましたが、このような疑いをもってAIの未来や経済について考えることができる良書です。

AIや経済に興味がある方は、ぜひ本書を手に取ってこれからの未来について思いを巡らしてみてください。

 

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